ワーキングプア

この間久しぶりにテレビを見た。といっても番組の半分終わってからだが。番組はNHK特集で、まじめにがんばっても経済的に恵まれない人をとりあげて、子供の進学資金もなかったりしてこういうのまずくない?というような番組だった。


僕は半分は仕方がないと思い、半分はまずいと思った。


仕方がないと思った半分は、労働と報酬の関係に関して。
僕は、労働に対する報酬は、労働が生んだ物の価値に対して払われるものであることが自然で、がんばったか、がんばってないかが基準になることはちょっと変だと思ってる。残念ながら一人ひとりの能力には差があって、がんばらなくてもすごい価値のあるものを生み出せる人はいるし、その逆にがんばってもそんなに価値を生み出せない人も要る。
がんばらなくても、すばらしい曲をつぎつぎと書けちゃう天才作曲家は、たくさん稼いでもいいし、がんばっても失敗ばかりの人に企業は金を払わなくてもいい。NPOじゃないんだから。

雇用者である企業が、被雇用者の生み出した物の価値に対して金を払うという普通のトレードにすることが、被雇用者が高い価値を生み出すモチベーションになるだろう。

そのためにはもちろん一人ひとりががんばるということもあるんだが、自己の能力向上のために投資をしたりする手もあって、みんなが自分の才能なりになるべく高い価値を生み出そうというモチベーションが高まれば、生産性が向上し、働く人全体で生み出す価値の総和が大きくなって、経済活動全般が生み出す価値が高まり、全体的に豊かになるだろう。
そう考えると、人による報酬の差はあってしかるべきな一方、正規労働者と一時労働者の大きすぎるギャップは変だ。その中間の価値を生んでいる人がいるはずだから。

正規労働者だけが色々保護される仕組みは変だし、最低賃金なんてのも変だ。
正規労働者だけが保護される労働法制のおかげで、企業は正社員を増やすことがリスクを抱えることになり、正社員を増やさずになんとかアルバイトで回していこうとするからフリーターが増えちゃうわけだし、最低賃金があるから、その時給に見合う価値を生み出せない人に職がないのだ。
多分テレビに出ていた人も、時給400円でもいいならいくらでも仕事は見つかるだろう。失業している人がいるのは社会にとって損失だから、それで働いてもらったほうが社会的にはいいはずだ。


で、能力がなければ、経済的にどうなってもいいか。本当に能力がなければ貧困になっても仕方ないかというとそれも違うと思う。病気や障害で高い価値を生み出せない人だって幸せに生きる権利はあるはずだし、ないと困る。僕もこれからいつ障害を持つことになるかもしれないし。そんな社会は犯罪者だらけで治安が悪くなるし。
失敗したらひどい貧困が待っているような社会だったらリスクをとって挑戦することができなくなり、経済も停滞すると思う。

だから、セフティネットがばっちりあることが必要だと思う。時給400円の職に付いている人は、あと600円分社会保障があるべきだ。
そうしたほうが失業して時給900円分社会保障に頼るより、安く付くし、社会的にも400円分の労働がプラスになる。その人も100円分豊かになる。もちろん障害で働けない人は900円分支給する(医療費は別にカバー)みたいな感じで。
雇用市場で価値を基準とした競争ができ、生産性があがれば、もっと税金取れるようになるだろうし、そうすればセフティネットのためのコストは十分捻出できるだろう。


また、教育に金がかかるという状況も変えなきゃいかんでしょう。高い教育レベルは生産性を高めるし、特に経済的に恵まれないが能力がある奴は、社会のためにも勉強してほしい。金持ちからはお代をいただけばいいんでヨーロッパみたいに大学タダにしなくてもいいけど、家庭の状況によって助けてあげるべきでは。


あと、生活保護以外の社会保障って、ほとんどがフローの年収が支給に際していろんな基準になっているけど、年収なし/資産持ちのリタイヤシニアが増える中で、資産の大小が基準にならないというのもちょっと変な気がする。資産持ちには社会保障は薄くしてもバチは当たらないでしょう。困っていないわけだし。その分本当に困ってる人に手厚くするべき。


で、そのためにはアメリカの社会保障番号のような国民総背番号制が欠かせないと思うわけです。これがあれば、所得と資産を簡単に、正確に把握できるので、不正受給も減らせるし、社会保険事務所や税務署の職員数も減らせてコストもダウンで言うことなしだと思うのですが。これに反対の人は、脱税してるか、資産隠してるかどちらかだと思うんですけどね。


ていうか、僕もプチワーキングプアの部類であることに気が付いた。客観的に見れば能力も努力も収入も人並み以下だよなー