大学に行くのは得なの?

大学が増えたというのもありますが、なんでそんなに大学に行きたい人も増えたのかというのも不思議です。
大学に行くことは元が取れることなのかを考えてみます。


最初に、大学に行くためのコストを試算してみます。

まず学費です。もっとかかる学校も沢山ありますが、とりあえず学費を600万とします。
そして、学校に行かずに4年間働いた場合と比べての機会費用をカウントします。高校卒20−24歳の平均年収が280万円ですが、大学に行きながらでもバイトくらいは出来るので、その差は年250万ほどということにしましょう。
そうすると4年間分で1000万。
学費+機会費用で1600万ほどのコストでしょうか。他に予備校代とかもありますが。とりあえずこうしておきましょう。


次に大学に行くことでどれくらいのリターンが見込めるかです。

H21賃金構造基本統計調査によると、高卒の平均年収が409万ほど(平均年齢41歳)で、大卒・大学院卒の平均年収が609万円ほど(平均年齢39歳) なので、その差は平均で見ると3割以上の差で年200万円。40年働くとすれば単純合計で8000万円の差があります。
この200万×40年のキャッシュフローは、金利1%で割り引いても6500万ほどの現在価値があります。手取りベースで考えても現在価値5500万は固い。

そうすると、1600万の投資で、平均的には5500万の現在価値があるものを手に入れるわけで、大学に行くことはとても元が取れる投資であると言えます。

これだけリターンがあるのなら、奨学金を借りてでも行きたいですね。


しかし、実はこの試算には若干問題があります。

まず、あくまでもこれは平均と平均の比較であって、同じ人が大学に行った場合と行かなかった場合の比較ではないことです。

平均的にもともと大学卒の人の方が高校卒より能力が高いとすれば、大学に行ったから+200万ということにはなりません。

そして、現時点では高校卒勤労者が942万人、大学・大学院卒勤労者が638万人と大学・大学院卒の方が少ないので多少の希少性がありますが、

これを25〜29歳に限ると、高校卒が86万人、大学・大学院卒が111万人と希少性は全くなくなっています。そして大学進学率はこの年齢層が大学に行っていた頃よりも更に上がっているので、これからはもっともっと希少性はなくなり、年200万の差は縮小していくと考えた方が良さそうです。実際、この年齢層では高校卒327万円、大学・大学院卒408万円とその差は2割以下です。

そして、月給の分布を見ると、月給20万未満の大卒は少なく、月給45万以上の高卒が少ないため平均に差は出ているものの、大卒も高卒も月給20万〜44万が6割以上であり、両端以外はそんなに極端な差があるわけではないようです。


以前は、大学には望めば全員入れるわけではなかったため、大学に行くことは1600万が5500万になるおいしい投資で、フリーランチが転がっていた状況だったのですが、望めばだれでも大学に入れるようになった現在、そして将来、そのフリーランチは裁定によって消えつつあるのかもしれません。


電力やガスなどのインフラ業が大学生の就職人気がとても高いようですが、これらの会社は、大卒で入ろうとすると枠が少なく大変ですが、高卒なら採用枠も大きくもっと簡単に入ることが出来ます。そして入ってしまえば、並みの大卒サラリーマンより待遇もいいですよ。

公務員の3種なんてのもいいですね。特に地方の現業職なんて夢のような職場も残っているみたいですしね。