アメリカみたいな社会になったら

小泉政権に対して「このままではアメリカみたいな社会になる」という批判を良く見かけるのですが、そんなにアメリカみたいな社会っていやですか?僕はアメリカの外にむけたわがまま乱暴加減はいやなのですが、社会の内部としては悪くないのではないかと思っています(そんなに知らないのですが)。


OECDの数字を見ると、2000年前後の数字で、「すごく幸福」+「まあ幸福」と答えた人の率がアメリカで96.8%に対して日本で89.2%、人口10万人ごとの自殺者がアメリカ10.4人に対して日本は22.5人と、これだけでみるとアメリカの方がよいのでは?と思います。


ふむ、じゃあ、問題とされている所得格差なんてのはどうなのでしょうか?ジニ係数という不平等度を表す指数で言うと、2000年の数字でアメリカ35.7に対して日本は31.4となっており、確かにアメリカのほうが所得格差は高いです。ちなみにOECD諸国の平均は30.8なので、もともと日本は格差がちょっと大きめな国なのですが。
あと、貧困率なんて数字がありました、これ、所得が全体の中央値の半分以下しかない人の率という定義なので、直接貧困度はあらわさない(同じ所得でも中央値が高ければ貧困ということになってしまう)指標だと思いますが、これで比べるとアメリカ17.1%に対して日本は15.3%、ちなみにOECD諸国の平均は10.2%なので、日本より若干アメリカのほうが格差は大きいが、他の国と比べればどっちもどっちと言えるレベルだ。


じゃあ平均的な豊かさということで比べると、2003の一人当りGDPを購買力平価で調整したもの(物価の差を調整したもの)が、アメリカ$37600に対して日本は$28000と、所得格差の差以上に豊かさの差がある。アメリカはより豊かだし、日本は物価が高すぎるのだ。ちなみにOECD諸国の平均は$25588なのでどちらも豊かな国ではあるが。


全体的に豊かだし、物価が安いので、多少格差が大きめでも、おそらくボトムの暮し向きは総じて日本よりアメリカのほうがいいのではないだろうか?たしかに20年前はアメリカのほうがホームレスは多かったと思うが、今は日本のほうが間違いなく多いように思える。ていうことは、アメリカみたいな社会ってけっこういいんじゃないでしょうか?更に、アメリカは雇用が流動的なので、今は失業していて所得はないけど、またちゃんと仕事が見つかる可能性が日本より高い。なので、所得階層の移動が大きく、ボトムがずっとボトムのままってことは日本よりずっと少なく(その逆にハイエンドが落ちちゃう可能性も高いんだが)。奨学金制度が整っているので世代間で階層が固定化する度合いも少ないなんて話も聞いたことがある。チャンスがある社会なのだ。日本みたいに、学卒でいい仕事に就けなければ終わりとか、リストラされたら終わりとか、親が貧しければ、子が成功するのが難しいてことはないのだ。
人種差別は確かにあるのだが、それは日本も同じだし、差別されがちな民族でもできるやつは企業が放っておかない社会だから、ちゃんと成功できるし。


アメリカの良さは、大陸の封建的な部分を嫌って建国したので、制度的に民主主義とか、自由とか、平等とかが徹底されていて、伝統がないだけに色々合理的に出来ているということが根源にあると思う。民主主義と不整合な皇室とかもないし、3権分立が徹底されており、言論の自由度や役所の透明性も高い。首相が官邸でオーラルセックスしてた話とかが、日本で記者クラブマスコミに載るとはちょっと思えないでしょ。
また、神武天皇が作った国とかじゃなくて、人民が作った国なので、国民のための国家という意識が強く、基本ナショナリズムは薄い。総じて官僚もクリーン(大統領が変わると辞めるんで悪い事しにくい)。また、お上にあまり余計な事させない国だ。お上は基本ろくなことをしないからこれも合理的。日本の物価が高いのは、かなりお上の規制による既得権益企業のぼろもうけのおかげだと思うんですよ。


で、僕は思うわけです「アメリカみたいな社会になるのはむしろ賛成」と。
ただ、アメリカ自体は、キリスト教原理主義、人種差別みたいな南部メンタリティが嫌いなのと治安の悪さと食べ物がねー。日本の社会がアメリカ化すればすばらしい国になると思う。