社会保障

市場経済は、市場が求める価値の生産に対して上手いことインセンティブを与えられるので、働いたり能力を向上させたりするモチベーションを高めることができる。なので、多分トータルな経済的豊かさを実現するためには非常に良いシステムだと思います。

ただ、市場に全て任せてしまうと色々問題が起きると思います。まず、貧困の問題があります。残念ながら人間の能力には大きな差があるので、努力の話は別として産出できる価値に大きな差が出てしまい、市場経済が提供する所得にもやはり差が出ます。差があってもそれは自己責任という話もありますが、憲法が保障する、健康で文化的な最低限度生活は送れないとまずくないですか?貧困が増える事の問題は、つまんないところからいくと、まず、犯罪が増えるという事だと思います。人間失うものがなければ犯罪を犯すことの障壁が低くなるので犯罪が増えやすくなり、治安を守るための社会的コストが増大すると思います。

あと、セフティネットがないと、チャレンジする気持ちが削がれるのではないかというのもあります。破産という制度があるから、借金して事業を起こしたりすることがより気楽にできると思うし、それと同じことが、最悪でも生きてはいけるという保証があるかないかで違ってくるのではないでしょうか?

そして、最も重大なこととしては、障害を持つ人だったり、病気になってしまった人をどうするかという話です。市場経済の中では、特殊能力がない限りどうしても所得は低くなってしまうと思うんですが、それでいいと思いますか?今は健康なあなたも、交通事故に遭って障害を持ったり、病気になるかもしれません。そのとき、自己責任だからと割り切れますか?保険に入ってるって?最長支払い日数を確認してください。高度障害の保険金を、残った生涯の年数で割り算してみてください。保険だけではたぶんその後健康で文化的な暮らしは送れないと思いますよ?

また、低所得の世帯ほど消費に回る比率が高いため、所得の低い世帯に金を回したほうが、需要不足に苦しむ今の日本経済には多分ポジティブです(資本不足が問題だった時代はこの逆なのですが)。

色々へ理屈を述べましたが、本当はホームレスの人とかに対して心が痛いというのが、所得再分配が必要だと思う大きな理由です。

不思議なのは、高所得の人が、小さな政府バンザイというのは当然なのですが、そうでもない若者も同じように思っている人が多そうなことです。現在の所得再分配のシステムは、ほっとくと肥大する官の宿命と、天下りを確保しなければならない必要などにより上手くいっていない部分が大きいとは思いますが、だから官の役割を減らして自己責任っていうのはちょっと違うかも。所得再分配のシステムをもっと良くするという方向で議論してく必要があるのではないでしょうか?

最低限保証されるべき生活のレベルで議論が分かれると思いますが、資産もなく働けない人には、妥当な医療+年80万位は必要でしょう(少ないっすか)。少しでも働くモチベーション付けのために、働いたら打ち切りでなく、収入に応じて補助を減額するような仕組み(あるのかな?)とか、NYのように低廉な住居を提供するシステムがあるといいと思います。最低限の生活保障のシステムは、親に資産がない苦学生が利用できてもいいと思います。
で、所得をコストをかけずに補足して制度を公平に運用するには、社会保険番号のような国民総背番号制(反対派は上手にやな感じのネーミングしたと思います)が必須かと。あれに反対しているのは脱税してる人がほとんどだと思うのですがどうなんでしょうか?
でも、こういう制度が出来たら、国民年金をだれも払わなくなるなぁ。それについてはそのうち。